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発達障害研究

自閉スペクトラム症と診断されても、コミュニケーション力、社会性、想像力、過敏性、こだわり、多動、注意持続のスパン、感情コントロール、手先の不器用さ、知的なレベル、実行機能、など、個人個人で大きく異なります。そのため、その子どもさんの状態をしっかり把握するためには、様々な観点(ディメンジョン)から診る必要があります。我々は、個々のお子さんを自閉スペクトラム症というカテゴリーだけで診るのではなく、ディメンジョン毎の評価をし、全人的にサポートすることを目標としています。それらを実現するため、以下のような研究を行っています。


実行機能研究

実行機能(executive function:EF)とは、前頭前皮質の発達を基盤とした高次の認知制御能力で目標を達成するために不適切な行動を抑制し,適切な行動の選択を可能にする能力の総称とされています。抑制,シフト,ワーキングメモリという3つの下位要素を中核とすると考えられています。

日本語版Behavior Rating Inventory of Executive Function (BRIEF) 標準化

発達心理学や児童精神医学の領域において,実行機能(EF)の評価や介入に関する研究が注目されているが,日本では,子どものEFに焦点を当てた質問紙評価の標準化はなされていない。我々は日本語版BRIEFの標準化を行った。 桃田ら、日本語版BRIEF構成概念妥当性の検証と標準化.2017印刷中

養育者記載版日本語版BRIEFとは,Gioia, Isquith, Guy & Kenworthy,(2000)が作成した抑制,シフト,情動制御,開始,ワーキングメモリ,計画/組織,整理,モニタの8つの下位尺度からなり,下位尺度得点によってプロフィールを作成し,日常生活上の問題行動を実行機能の下位要素ごとに詳しく検討できる質問紙の日本語版である。

養育者記載版日本語版BRIEFの構成因子は,「抑制」10項目,「シフト」8項目,「情動制御」10項目,「開始」8項目,「ワーキングメモリ」10項目,「計画/組織」12項目,「整理」6項目,「モニタ」8項目,の8つの下位尺度72項目と得点には使用しない14項目の臨床尺度の86項目で構成されている。回答は,「問題にならない(1点)」,「ときどき問題になる(2点)」,「しばしば問題になる(3点)」の3件法で求める。これらの得点は,換算表を用いてTスコアに換算され,Tスコアが高いほど日常生活における実行機能に関連する行動に問題があることを示す。

日本人中学生2236人(男児1,089, 女児1,147人)の得点をもとに算出したTスコア換算表と各項目の因子負荷量と示した。

養育者記載版日本語版BRIEFの因子得点とT得点換算表 [PDF]

不注意優勢型注意欠如多動症(ADHD−I)児の実行機能に関する研究

BRIEFおよびCANTABeclipse (CANTAB, タッチスクリーン型の実行機能検査バッテリー)を用いて不注意優勢型注意欠如多動症(ADHD−I)の児の実行機能を評価した。結果、BRIEFについては、「情動コントロール」以外のすべての下位項目でADHD-I群の方が定型発達群よりも有意に得点が高くEF障害が示された。さらに、BRIEFとCANTABのパラメーターに有意な相関を認め、EF評価ツールとしてのBRIEFの妥当性が支持された。教育や支援現場で特別の設備投資が不要なBRIEFは、EF障害を早期に発見し、適切な支援を行う上で、有用なツールと考えられた。

Nagatani F, Matsuzaki J, Eto M, Kagitani-Shimono K, Mohri I, Taniike M.  Assessment of executive function using the Behavior Rating Inventory of Executive Function (BRIEF) and the Cambridge Neuropsychological Test Automated Battery (CANTAB) in young children with attention deficit/hyperactivity disorder, inattention type. J Brain Science, 39: 5 -21 2012.

日本人小学生を対象としたCANTAB標準値の作成とその発達的変化に関する検討

小児に対しても簡易に実施可能な実行機能検査バッテリーとして、Cambridge Neuropsychological Test Automated Battery (CANTAB)があるが、日本人小児の標準値はまだない。我々は学齢期児童を対象とした実行機能の発達的変化をCANTABを用いて検討する。


ASDの発達軌跡・予後研究

自閉スペクトラム症と診断されれば、予後は一定,という訳ではありません。我々は、どのような因子が発達に影響するのかを研究しています。

東 晴美 , 毛利 育子 , 下野 九理子 , 奥野 裕子 , 橘 雅弥 , 和田 和子 , 谷池 雅子. 自閉症スペクトラム障害と診断された小児の周産期の危険因子. 日本未熟児新生児学会雑誌 25(2); 177-189, 2013.06

東 晴美, 毛利 育子, 橘 雅弥, 大野 ゆう子, 谷池 雅子.自閉症スペクトラム障害児の発達軌跡の解析.脳と発達46(6): 429-437. 2014.11