分子生物遺伝学研究領域 片山研究室

研究プロジェクト

(1) 自閉スペクトラム症(ASD)の早期気づき、診断、原因解明に関する研究

発達障害の一つASDは、人の気持ちが読めない、他人とのコミュニケーションが取れない、非常に限定的な著しい興味対象(こだわりの強さ)という3つの特徴を有する胎生期、または生後早期に起きる神経発達障害であると言われています。多くは3歳までに特徴が顕在化し、以後生涯に渡って特徴が持続するため社会生活上著しい困難を伴います。近年ASDの有病率は増加の一途をたどっていますがASDの原因は不明であり、根本的治療方法はありません。一方で、できる限り早期に見つけ診断に基づく早期の教育的介入(療育)を行う事により、予後が改善することが知られていることから、早期診断・早期療育の実現が求められています。私達は、自閉症者脳においてSerotonin Transporter (SERT) 密度が低下しているという同じ連合大学院の浜松医科大学チームの先行研究成果を踏まえ、脳におけるSERT結合分子群を同定し、有用な診断法・原因解明につなげる研究を浜松医科大学、福井大学と共同して行っています。

(2) 蛋白質の翻訳後修飾に着目した神経・精神疾患発症機構の解明

蛋白質翻訳後修飾はリン酸化、ユビキチン化、メチル化、糖鎖修飾、など多数報告されている。これらは、近年、神経・精神疾患発症経路、シナプス機能制御、虚血性細胞死等に関与することが報告されるようになり、非常に注目を浴びている。これらタンパク質の翻訳後修飾の内、我々は、①ユビキチン化様修飾の一つ、Small Ubiquitin-like Modifier (SUMO)化に注目して研究を行っている。SUMO化の変化が細胞内小器官(小胞体、ミトコンドリア、等)の働きに影響を与え、精神疾患・神経疾患発症につながる可能性について分子生物学的・形態学的解析を用いて検討している。現在、「ミトコンドリアの分裂と融合」にSUMO化が関与するという興味深い結果を得て、詳細なメカニズムの解析を行っている。

また、他に注目している翻訳後修飾として②タンパク質のメチル化の影響について検討している。脳できわめて豊富に惹起されているにもかかわらずこれまであまり注目を浴びてこなかった「タンパク質のメチル化」の意義に関して、アルギニンメチル基転移酵素(PRMT)の細胞内小器官の機能調節への影響について研究する中で、細胞内小器官の中でも特にゴルジ体の形態と機能に影響を与えていることを明らかにし、現在、その詳細なメカニズムを検討している。

(3) 精神疾患の分子メカニズムの解明を目指した研究

近年の遺伝学的研究により、他の器質的疾患と同様、精神疾患においても発症リスクにかかわる脆弱性因子が多数報告されるようになってきた。我々の研究領域では、統合失調症、うつ病などの主要な精神疾患脆弱性遺伝子を中心に、これら脆弱性因子が脳と心の発達に及ぼす影響を解剖学的、細胞生物学的な手法を中心に検討を進め、児童思春期の精神疾患の発症メカニズムを分子レベルで解明することを目的としている。例えば、Stathmin1,DISC1とその相互作用分子(DBZ,FEZ1,Kendrin等)について研究を重ねてきたが、現在、「神経における一次繊毛の役割」に特に注目して研究を行っている。

(4) 軸索に特異的な細胞骨格に着目した神経・精神疾患発症機構の解明

神経細胞の軸索にはAnkyrinやSpectrinから構成される特異的な細胞骨格があります。我々は、自閉症や知的障害、注意欠陥多動性障害などに関わるAnkyrin G、精神運動発達遅滞を伴う小児難治てんかんの指定難病であるウエスト症候群に関わるαII-spectrin、これら2つの細胞骨格分子に着目し、軸索においてこれらの分子がどのように制御されているかを分子レベルで解明することで、これらの疾患の発症機序の解明を目指しています。

(5) 小胞体ストレス研究

私たちはこれまでに小胞体を中心とした細胞内小器官の異常(小胞体ストレス)が、アルツハイマー病・ALS等の神経変性疾患発症に関与していることを報告してきました。また小胞体ストレスに関連する分子が精神疾患患者で大きく変化していたことが報告されたことから現在、細胞内小器官の障害が精神疾患発症に関わる可能性について検討中です。また、これまで行ってきた小胞体ストレス研究も継続して行っています。

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